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 きっかけは母親にもらったキーケースが壊れた時でした。

 イタリア旅行に行っていた母親がお土産として買ってきた現地メーカーのキーケースが使い始めて数ヶ月で壊れてしまいました。再度、今度は日本のキーケースをもらったものの、やはりすぐに壊れてしまいました。二度目の時には壊れた拍子に落としていたのですが、次の日に届けてくれた方がいて本当に助かりました。  そしてこの二度目に壊れた時に残念な気持ちと共にフツフツと・・・「自分で作る!」と決めて吹っ切れたのと同時に自分が机に向かって作業をしている姿が頭のなかに<パーンッ>と入ってきました。その姿は今でも鮮明に思い出しますが、自分は椅子に座り周りには使い込まれた手道具と机があり<普通に仕事している>、という感じだったのです。簡単に言えばその一瞬の映像を信じて今までやってきているといえます。

 それからは市販品を買ってきて構造の勉強をしたり、海外の革製品店を巡り歩いたり、本を読んで学んだりしました。特に本は海外からも取り寄せたりしつつ今まで何百冊も読んで多くのことを学びました。趣味の木工品作りやバイク整備なども道具面、考え方、共に役に立ちました。
 そうして何年か革細工の製作をやっているうちに靴作りに出会いました。

オーダー靴を十分縫い(じゅうぶぬい)で作る。

十分縫いとは、靴の底を付ける作業(スクイ縫い、ダシ縫い他)をすべて手縫いによって完成させることです。手縫いで製作する事によって靴のウエスト(内踏まず)部分を足に合わせて自然に絞り込む事ができ、シルエットが綺麗に見えます。これはベベルドウエストとも言い、現在の機械では縫えない技術です。底取り付け時の製法としては他にスクイ、マッケイ、ノルベジェーゼ、ノルウィージャンウェルテッド、ブラックラピド、ステッチダウン、オパンケ、ボロネーゼなどがあり、それらの技術を習得することができました。
 また、本当のオーダー靴とは履く人の足を計測して木型に置き換えて製作しデザインも気に入ったものに仕上げる、というものです。
このオーダー靴を十分縫いでできるようになってから製作技術が飛躍的に上がり、又それまで培ってきた革細工の技術とデザインの多様性も向上しました。
この間に長くいた仙台から工房を変え、2007年5月京都にて工房を出すことにしました。

ローカルブランドとして

 先述の海外の革製品店を巡り歩いていた習作時代に感じていたのですが町には旧市街と新市街または旧市街のみの町などが多数ありました。
旧市街は元々小さなひとつの国のような感じで、はっきりとココから旧市街地だと分かるところが少なくありませんでした。町全体に城壁が張り巡らされていたり大きな石の門が残っていたり建築物の始まるあたりから石畳がはじまっていたりしました。

そんな旧市街地の小さな町々の一角にはバッグにしろ靴にしろなにがしかの革製品屋さんがありました。そういった店の奥には工房があり、その店で並んでいる商品は当然その工房で製作された物でした。
店で作ったものを店で売る。
とてもシンプルなことがどれくらい昔からかは分かりませんが続けられてきているようでした。そのシンプルなスタイルにとても共感を覚えました。言ってみれば私は突然思い立って始めていただけで歴史や伝統はありませんが、その自分で作って自分で売る、というシンプルなスタイルではあったのです。

それが私の思うローカルブランドです。そのローカルブランドのスタイルを持ち昔見た映像<机に向かって作業をしている姿>を続けていくことが私の思いです。

2007年 某日 呉田 智康 (クレタ トモヤス)

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